全微分を直観的に把握するコツのようなものを書きます。
※ 偏微分の知識を前提としています。
シリーズの記事です。
目次
全微分
$f$ を $x,y$ の二変数関数とします。
f=f(x,y)
$f$ の変化量は、$x$ による変化量と $y$ による変化量を足したものとして表されます。これを $df$ と表記して全微分と呼びます。
\underbrace{df}_{f\text{の変化量}}=\underbrace{\overbrace{\frac{∂f}{∂x}}^{\text{傾き}}\overbrace{dx}^{x\text{の変化量}}}_{x\text{による変化量}}+\underbrace{\overbrace{\frac{∂f}{∂y}}^{\text{傾き}}\overbrace{dy}^{y\text{の変化量}}}_{y\text{による変化量}}
左辺をバラすと右辺になると見立てれば、イメージが湧くかもしれません。
略記法
一変数関数 $f(x)$ は $x$ で微分するのが明らかなため、よく $f'(x)$ と略記されます。これをラグランジュの記法と呼びます。
f'(x):=\frac{df}{dx}
※ 右辺の分数形はライプニッツの記法と呼びます。
多変数関数の場合、どの変数で偏微分するかを明記する必要があります。添字による略記法があります。
f_x:=\frac{∂f}{∂x}
f_y:=\frac{∂f}{∂y}
$x,y$ 成分を持たないスカラー場 $f$ を、偏微分でベクトル場に変換して成分を取り出しています。詳細はこちらを参照してください。
【参考】 wikipedia:微分の記法
成分分解
略記法を使えば、全微分は成分分解のように見立てられます。
df=f_x\,dx+f_y\,dy
※ 左辺をバラすと右辺になるイメージに合います。
$d$ がベクトルの矢印だと思えば、イメージが湧くのではないでしょうか。
\vec{f}=f_x\vec{x}+f_y\vec{y}
この表記の感覚がつかめれば、全微分は暗記するまでもない身も蓋もないもののように思えて来ます。
※ 実際、$df$ は余接ベクトル(余接空間上のベクトル)として解釈できます。
\underbrace{df}_{\text{ベクトル}}=\underbrace{f_x}_{\text{成分}}\underbrace{dx}_{\text{基底}}+\underbrace{f_y}_{\text{成分}}\underbrace{dy}_{\text{基底}}
その他
全微分の応用は以下の記事を参照してください。