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ホッジ双対とクリフォード代数

外積代数の内積とホッジ双対をクリフォード代数で計算します。特にミンコフスキー空間のホッジ双対を求めるのに便利です。

この記事は以下をベースに、解釈やクリフォード代数などを補いました。

シリーズの記事です。

  1. ホッジ双対とクリフォード代数 ← この記事
  2. マルチベクトルの内積
  3. 余微分の定義を追う
  4. 2~4次元で余微分を計算
  5. 2~4次元で余微分とディラック作用素を比較
  6. 外積代数と左内積
  7. 余微分とディラック作用素の内積部分
  8. 左内積とウェッジ積の交換
  9. 余微分のライプニッツ則

目次

定義

k-ベクトルのホッジスターの定義より:

α=α_1∧⋯∧α_k,\ β=β_1∧⋯∧β_k
\begin{aligned} ⟨α,β⟩ &=\det \left( ⟨α_i,β_j⟩ \right) \\ &=\det \left( \begin{matrix} ⟨α_1,β_1⟩&⋯&⟨α_1,β_k⟩ \\ ⋮&⋱&⋮ \\ ⟨α_k,β_1⟩&⋯&⟨α_k,β_k⟩ \end{matrix} \right) \end{aligned}
α∧(\star β)=⟨α,β⟩ω

$⟨α,β⟩$ は k-ベクトルの内積で、1-ベクトルの内積を成分とした行列(内積テンソル)の行列式として定義している。

$α∧(\star β)$ は外積(ウェッジ積)によって内積を求める方法を定義している。内積は擬スカラーとして得られ、$ω$ は単位擬スカラーと呼ばれる n 次元 n-ベクトルの基底である。

Wikipedia では $ω$ の符号の任意性に言及している。

n-ベクトル の空間は 1 次元で、したがって単位 n-ベクトル $ω$ は二つとりかたがある。このどちらかを選ぶことにより V 上の向き付けが決まる。

この記事では、単位擬スカラーは基底を昇順で並べて正に取る。しばしばクリフォード代数では虚数単位 $i$ と同一視される。

ω=e_1∧⋯∧e_n

この記事の主な目的は、クリフォード代数による以下の計算方法を導入して、なるべく簡単にホッジ双対を求めることである。

⟨α,α⟩=|α|^2=\tilde αα
\star α=\tilde αi

内積

⟨α,β⟩=\det \left( ⟨α_i,β_j⟩ \right)

以下、計量 $1$ のユークリッド空間での正規直交基底のみの組み合わせを確認する。

⟨e_i,e_j⟩ =δ_{ij} =\left\{\begin{array}{lc} 1&(i=j) \\ 0&(i≠j) \end{array}\right.

2-ベクトルの例

\begin{aligned} ⟨e_1∧e_2,e_1∧e_2⟩ &=\det \left( \begin{matrix} ⟨e_1,e_1⟩&⟨e_1,e_2⟩\\ ⟨e_2,e_1⟩&⟨e_2,e_2⟩ \end{matrix} \right) \\ &=\det \left( \begin{matrix} 1&0\\ 0&1 \end{matrix} \right) \\ &=1 \end{aligned}
\begin{aligned} ⟨e_1∧e_2,e_2∧e_3⟩ &=\det \left( \begin{matrix} ⟨e_1,e_2⟩&⟨e_1,e_3⟩\\ ⟨e_2,e_2⟩&⟨e_2,e_3⟩ \end{matrix} \right) \\ &=\det \left( \begin{matrix} 0&0\\ 1&0 \end{matrix} \right) \\ &=0 \end{aligned}

ノルムの2乗

自分自身との内積をノルムの2乗とする。

|α|^2:=⟨α,α⟩=\det \left( ⟨α_i,α_j⟩ \right)

直交基底では対角成分の積、つまり個々の計量を掛け合わせた値となる。

e_{i_1}∧⋯∧e_{i_k}≠0
\begin{aligned} |e_{i_1}∧⋯∧e_{i_k}|^2 &=\det \left( \begin{matrix} ⟨e_{i_1},e_{i_1}⟩&⋯&⟨e_{i_1},e_{i_k}⟩ \\ ⋮&⋱&⋮ \\ ⟨e_{i_k},e_{i_1}⟩&⋯&⟨e_{i_k},e_{i_k}⟩ \end{matrix} \right) \\ &=⟨e_{i_1},e_{i_1}⟩⋯⟨e_{i_k},e_{i_k}⟩ \\ &=|e_{i_1}|^2⋯|e_{i_k}|^2 \end{aligned}

ユークリッド空間のように計量がすべて正であれば、ノルムがマイナスになることはない(正定値性)。

ミンコフスキー空間のように負の計量が含まれる空間では、ノルムの2乗はマイナスになることがある。ノルムの正定値性を満たさないため厳密にはノルムではないが、ここでは便宜的にノルムと呼んでおく。

クリフォード代数による計算

クリフォード代数での積は幾何積と呼ばれる。演算子は表記しない。同じ基底の幾何積は内積として計量になり、異なれば反交換となる。$i≠j$ として:

e_i e_i=1,\ e_i e_j=-e_je_i

ウェッジ積は内積が $0$ に退化した幾何積だと解釈できる。

e_i∧e_i=0,\ e_i∧e_j=-e_j∧e_i

内積以外の演算はウェッジ積と同一視できる。(外積

e_i e_j=e_i∧e_j

外積代数での2-ベクトルの内積と、幾何積とを比較する。符号が合わない。

\begin{aligned} |e_i∧e_j|^2&=|e_i|^2|e_j|^2=1 \\ (e_i e_j)^2&=e_i e_j e_i e_j=-e_i e_i e_j e_j=-e_i^2 e_j^2=-1 \end{aligned}

※ 幾何積では、反交換により同じ基底を隣接させてから、内積として計量に変換する。

基底を逆順にして幾何積を計算すれば、外積代数と同じ値が得られる。逆順をチルダで表すと:

(\widetilde{e_i e_j})(e_i e_j)=e_j e_i e_i e_j=e_i^2 e_j^2=1

連鎖的に計量に変換されていく。これは任意のグレードで成立する。

⟨α,α⟩=|α|^2=\tilde αα

同じやり方で異なる基底の内積を計算するとスカラーとはならない。$i,j,k$ がすべて異なるとして:

(\widetilde{e_i e_j})(e_j e_k)=e_j e_i e_j e_k=-e_i e_k

この場合でもスカラー成分 $0$ により内積 $0$ が得られる。

ホッジ双対

ホッジ双対は外積(ウェッジ積)によって内積を求めるために必要となる変換で、ホッジスター $\star$ によって表される。内積を求めるための双対という観点では、テンソルの双対(共変と反変)に似ている。

α∧(\star β)=⟨α,β⟩ω

既にノルムの2乗が分かっているので、それを利用してホッジ双対を求める。

α∧(\star α)=|α|^2ω

ここでは $α$ を基底のみのウェッジ積とする。

α=e_{i_1}∧⋯∧e_{i_k}≠0

$α$ の係数が $1$ であることから、右辺の係数 $|α|^2$ は $\star α$ に由来する。

$α$ と $\star α$ とのウェッジ積は基底が $ω$ になることから、$\star α$ の基底は $ω$ から $e _ {i_1}⋯e _ {i_k}$ を取り除いたものとなる。これに $k+1$ 以降の添え字を割り当て、取り除く基底をハットで表すと:

e_{i_{k+1}}∧⋯∧e_{i_n}=e_1∧⋯∧\widehat{e_{i_1}}∧⋯∧\widehat{e_{i_k}}∧⋯∧e_{n}

ウェッジ積の反交換性により、基底の並べ替えに伴って符号が変化する。

σ=\left(\begin{matrix} 1&⋯&n \\ i_1&⋯&i_n \end{matrix}\right)
\mathrm{sgn}(σ) =\left\{\begin{array}{rc} 1&\text{偶置換} \\ -1&\text{奇置換} \end{array}\right.
e_1∧⋯∧e_n=\mathrm{sgn}(σ)e_{i_1}∧⋯∧e_{i_n}

まとめると:

\star α=\mathrm{sgn}(σ)|α|^2e_{i_{k+1}}∧⋯∧e_{i_n}
\begin{aligned} α∧(\star α) &=(e_{i_1}∧⋯∧e_{i_k})∧(\mathrm{sgn}(σ)|α|^2e_{i_{k+1}}∧⋯∧e_{i_n}) \\ &=|α|^2\mathrm{sgn}(σ)e_{i_1}∧⋯∧e_{i_n} \\ &=|α|^2e_1∧⋯∧e_n \\ &=|α|^2ω \end{aligned}

以下、ユークリッド空間での計算例を示す。ユークリッド空間の正規直交基底では $|α|^2=1$ となるため、並べ替えによって符号 $\mathrm{sgn}(σ)$ を計算すれば良い。

2次元の例

ω=e_1∧e_2
\begin{aligned} \star 1&=e_1∧e_2&⇐\quad&(1)∧(e_1∧e_2)=ω \\ \star e_1&=e_2&⇐\quad&(e_1)∧(e_2)=ω \\ \star e_2&=-e_1&⇐\quad&(e_2)∧(e_1)=-ω \\ \star(e_1∧e_2)&=1&⇐\quad&(e_1∧e_2)∧(1)=ω \\ \end{aligned}

3次元の例

ω=e_1∧e_2∧e_3
\begin{aligned} \star 1&=e_1∧e_2∧e_3&⇐\quad&(1)∧(e_1∧e_2∧e_3)=ω \\ \star e_1&=e_2∧e_3&⇐\quad&(e_1)∧(e_2∧e_3)=ω \\ \star e_2&=-e_1∧e_3&⇐\quad&(e_2)∧(e_1∧e_3)=-ω \\ \star e_3&=e_1∧e_2&⇐\quad&(e_3)∧(e_1∧e_2)=ω \\ \star(e_1∧e_2)&=e_3&⇐\quad&(e_1∧e_2)∧(e_3)=ω \\ \star(e_1∧e_3)&=-e_2&⇐\quad&(e_1∧e_3)∧(e_2)=-ω \\ \star(e_2∧e_3)&=e_1&⇐\quad&(e_2∧e_3)∧(e_1)=ω \\ \star(e_1∧e_2∧e_3)&=1&⇐\quad&(e_1∧e_2∧e_3)∧(1)=ω \\ \end{aligned}

巡回的(1→2→3→1→2→3→⋯)に並べればプラスに揃えられる。

\begin{aligned} \star e_2&=e_3∧e_1 \\ \star(e_3∧e_1)&=e_2 \end{aligned}

4次元の例

ω=e_1∧e_2∧e_3∧e_4
\begin{aligned} \star 1&=e_1∧e_2∧e_3∧e_4&⇐\quad&(1)∧(e_1∧e_2∧e_3∧e_4)=ω \\ \star e_1&=e_2∧e_3∧e_4&⇐\quad&(e_1)∧(e_2∧e_3∧e_4)=ω \\ \star e_2&=-e_1∧e_3∧e_4&⇐\quad&(e_2)∧(e_1∧e_3∧e_4)=-ω \\ \star e_3&=e_1∧e_2∧e_4&⇐\quad&(e_3)∧(e_1∧e_2∧e_4)=ω \\ \star e_4&=-e_1∧e_2∧e_3&⇐\quad&(e_4)∧(e_1∧e_2∧e_3)=-ω \\ \star(e_1∧e_2)&=e_3∧e_4&⇐\quad&(e_1∧e_2)∧(e_3∧e_4)=ω \\ \star(e_1∧e_3)&=-e_2∧e_4&⇐\quad&(e_1∧e_3)∧(e_2∧e_4)=-ω \\ \star(e_1∧e_4)&=e_2∧e_3&⇐\quad&(e_1∧e_4)∧(e_2∧e_3)=ω \\ \star(e_2∧e_3)&=e_1∧e_4&⇐\quad&(e_2∧e_3)∧(e_1∧e_4)=ω \\ \star(e_2∧e_4)&=-e_1∧e_3&⇐\quad&(e_2∧e_4)∧(e_1∧e_3)=-ω \\ \star(e_3∧e_4)&=e_1∧e_2&⇐\quad&(e_3∧e_4)∧(e_1∧e_2)=ω \\ \star(e_1∧e_2∧e_3)&=e_4&⇐\quad&(e_1∧e_2∧e_3)∧(e_4)=ω \\ \star(e_1∧e_2∧e_4)&=-e_3&⇐\quad&(e_1∧e_2∧e_4)∧(e_3)=-ω \\ \star(e_1∧e_3∧e_4)&=e_2&⇐\quad&(e_1∧e_3∧e_4)∧(e_2)=ω \\ \star(e_2∧e_3∧e_4)&=-e_1&⇐\quad&(e_2∧e_3∧e_4)∧(e_1)=-ω \\ \star(e_1∧e_2∧e_3∧e_4)&=1&⇐\quad&(e_1∧e_2∧e_3∧e_4)∧(1)=ω \\ \end{aligned}

クリフォード代数による計算

幾何積では内積外積(ウェッジ積)を同時に計算するため、内積の計算にホッジ双対を使う必要はないが、幾何積の性質を利用すれば簡単にホッジ双対が求まる。

$\star α=\tilde αi$ (チルダは逆順、$i$ は単位擬スカラー)とすれば:

α∧(\star α)=α\tilde αi=|α|^2i

$\tilde αi$ には、同じ基底を交換により隣接させて内積を求める過程に $\mathrm{sgn}(σ)$ と $|α|^2$ の計算が含まれている。

\begin{aligned} \tilde αi &=\tilde α(e_1⋯e_n) \\ &=\tilde α(\mathrm{sgn}(σ)e_{i_1}⋯e_{i_n}) \\ &=\tilde α(\mathrm{sgn}(σ)αe_{i_{k+1}}⋯e_{i_n}) \\ &=\mathrm{sgn}(σ)(\tilde αα)e_{i_{k+1}}⋯e_{i_n} \\ &=\mathrm{sgn}(σ)|α|^2e_{i_{k+1}}⋯e_{i_n} \\ &=\star α \end{aligned}

Wikipedia3次元の例ではクリフォード代数に言及している。

{\mathbf {A}}={\mathbf {a}}i\,,\quad {\mathbf {a}}=-{\mathbf {A}}i.

逆順にすれば符号調整は不要となる。

{\mathbf {A}}={\mathbf {\tilde a}}i\,,\quad {\mathbf {a}}={\mathbf {\tilde A}}i.

ユークリッド空間の例

4次元で確認する。

\begin{aligned} \star 1&=1(e_1e_2e_3e_4)=e_1e_2e_3e_4 \\ \star e_1&=e_1(e_1e_2e_3e_4)=e_2e_3e_4 \\ \star e_2&=e_2(e_1e_2e_3e_4)=-e_1e_3e_4 \\ \star e_3&=e_3(e_1e_2e_3e_4)=e_1e_2e_4 \\ \star e_4&=e_4(e_1e_2e_3e_4)=-e_1e_2e_3 \\ \star(e_1e_2)&=(e_2e_1)(e_1e_2e_3e_4)=e_3e_4 \\ \star(e_1e_3)&=(e_3e_1)(e_1e_2e_3e_4)=-e_2e_4 \\ \star(e_1e_4)&=(e_4e_1)(e_1e_2e_3e_4)=e_2e_3 \\ \star(e_2e_3)&=(e_3e_2)(e_1e_2e_3e_4)=e_1e_4 \\ \star(e_2e_4)&=(e_4e_2)(e_1e_2e_3e_4)=-e_1e_3 \\ \star(e_3e_4)&=(e_4e_3)(e_1e_2e_3e_4)=e_1e_2 \\ \star(e_1e_2e_3)&=(e_3e_2e_1)(e_1e_2e_3e_4)=e_4 \\ \star(e_1e_2e_4)&=(e_4e_2e_1)(e_1e_2e_3e_4)=-e_3 \\ \star(e_1e_3e_4)&=(e_4e_3e_1)(e_1e_2e_3e_4)=e_2 \\ \star(e_2e_3e_4)&=(e_4e_3e_2)(e_1e_2e_3e_4)=-e_1 \\ \star(e_1e_2e_3e_4)&=(e_4e_3e_2e_1)(e_1e_2e_3e_4)=1 \\ \end{aligned}

ミンコフスキー空間の例

ホッジ双対に計量が関係するミンコフスキー空間でも、同様の手順で求まる。

計量は西海岸規約 (+---) とする。

光速を省略

簡単のため $c=1$ として光速を省略する。時空代数の流儀に従って基底は $γ$ で表記し、微分形式との対応から添え字は上に付ける。

(γ^0)^2=1,\ (γ^1)^2=(γ^2)^2=(γ^3)^2=-1,\ i=γ^0γ^1γ^2γ^3

※ $(γ ^ 0) ^ 2$ における上付きの数字には2種類の意味がある。$γ$ に直接付いている 0 は添え字で、括弧に付いている 2 は指数を表す。

\begin{aligned} \star 1&=1(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^0γ^1γ^2γ^3 \\ \star γ^0&=γ^0(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^1γ^2γ^3 \\ \star γ^1&=γ^1(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^0γ^2γ^3 \\ \star γ^2&=γ^2(γ^0γ^1γ^2γ^3)=-γ^0γ^1γ^3=γ^0γ^3γ^1 \\ \star γ^3&=γ^3(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^0γ^1γ^2 \\ \star(γ^0γ^1)&=(γ^1γ^0)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=-γ^2γ^3 \\ \star(γ^0γ^2)&=(γ^2γ^0)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^1γ^3 \\ \star(γ^0γ^3)&=(γ^3γ^0)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=-γ^1γ^2 \\ \star(γ^1γ^2)&=(γ^2γ^1)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^0γ^3 \\ \star(γ^1γ^3)&=(γ^3γ^1)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=-γ^0γ^2 \\ \star(γ^2γ^3)&=(γ^3γ^2)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^0γ^1 \\ \star(γ^0γ^1γ^2)&=(γ^2γ^1γ^0)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^3 \\ \star(γ^0γ^1γ^3)&=(γ^3γ^1γ^0)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=-γ^2 \\ \star(γ^0γ^2γ^3)&=(γ^3γ^2γ^0)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^1 \\ \star(γ^1γ^2γ^3)&=(γ^3γ^2γ^1)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=γ^0 \\ \star(γ^0γ^1γ^2γ^3)&=(γ^3γ^2γ^1γ^0)(γ^0γ^1γ^2γ^3)=-1 \\ \end{aligned}

$γ ^ 0,γ ^ 1,γ ^ 2,γ ^ 3$ を $\mathrm dt,\mathrm dx,\mathrm dy,\mathrm dz$ に読み替えれば、Wikipedia4次元の例と一致することが確認できる。

\begin{aligned} \star {\mathrm d}t&={\mathrm d}x∧{\mathrm d}y∧{\mathrm d}z \\ \star {\mathrm d}x&={\mathrm d}t∧{\mathrm d}y∧{\mathrm d}z \\ \star {\mathrm d}y&={\mathrm d}t∧{\mathrm d}z∧{\mathrm d}x \\ \star {\mathrm d}z&={\mathrm d}t∧{\mathrm d}x∧{\mathrm d}y \\ \star ({\mathrm d}t∧{\mathrm d}x)&=-{\mathrm d}y∧{\mathrm d}z \\ \star ({\mathrm d}t∧{\mathrm d}y)&={\mathrm d}x∧{\mathrm d}z \\ \star ({\mathrm d}t∧{\mathrm d}z)&=-{\mathrm d}x∧{\mathrm d}y \\ \star ({\mathrm d}x∧{\mathrm d}y)&={\mathrm d}t∧{\mathrm d}z \\ \star ({\mathrm d}x∧{\mathrm d}z)&=-{\mathrm d}t∧{\mathrm d}y \\ \star ({\mathrm d}y∧{\mathrm d}z)&={\mathrm d}t∧{\mathrm d}x \\ \end{aligned}

光速を表記

$c$ と $dt$ をひとまとめにして計量を定義する。

(c\,dt)^2=1,\ dx^2=dy^2=dz^2=-1,\ i=c\,dt\,dx\,dy\,dz

$c$ に注意して計算する。

\star (c\,dt)=c\,dt(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=dx\,dy\,dz

$c$ で割れば $\star dt$ が得られる。

\star dt=\frac 1 c\,dx\,dy\,dz

同様にして:

\begin{aligned} \star 1&=1(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=c\,dt\,dx\,dy\,dz \\ \star dt&=\frac 1 c\,c\,dt(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=\frac 1 c\,dx\,dy\,dz \\ \star dx&=dx(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=c\,dt\,dy\,dz \\ \star dy&=dy(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=c\,dt\,dz\,dx \\ \star dz&=dz(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=c\,dt\,dx\,dy \\ \star (dt\,dx)&=\frac 1 c(dx\,c\,dt)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=-\frac 1 c\,dy\,dz \\ \star (dt\,dy)&=\frac 1 c(dy\,c\,dt)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=-\frac 1 c\,dz\,dx \\ \star (dt\,dz)&=\frac 1 c(dz\,c\,dt)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=-\frac 1 c\,dx\,dy \\ \star (dx\,dy)&=(dy\,dx)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=c\,dt\,dz \\ \star (dy\,dz)&=(dz\,dy)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=c\,dt\,dx \\ \star (dz\,dx)&=(dx\,dz)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=c\,dt\,dy \\ \star (dt\,dx\,dy)&=\frac 1 c(dy\,dx\,c\,dt)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=\frac 1 c\,dz \\ \star (dt\,dy\,dz)&=\frac 1 c(dz\,dy\,c\,dt)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=\frac 1 c\,dx \\ \star (dt\,dz\,dx)&=\frac 1 c(dx\,dz\,c\,dt)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=\frac 1 c\,dy \\ \star (dx\,dy\,dz)&=(dz\,dy\,dx)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=c\,dt \\ \star (c\,dt\,dx\,dy\,dz)&=(dz\,dy\,dx\,c\,dt)(c\,dt\,dx\,dy\,dz)=-1 \end{aligned}

同じパターンでの符号を揃えるため、空間成分を巡回的に並べている。

2回適用

ホッジスターの2回適用、つまりホッジ双対のホッジ双対について考える。

Wikipedia双対性より、$η$ は n 次元の k-ベクトルとして:

\star\star η=(-1)^{k(n-k)}sη

$s$ は単位擬スカラー $ω$ のノルムの2乗を表す。

s=|ω|^2

Wikipedia では次の補足がある。

通常のユークリッド空間では符号は常に正であり、従って、$s=1$ である。

導出

n 次元 k-形式の基底の添え字を $i _ 1,⋯,i _ k$、そのホッジ双対の基底の添え字を $i _ k+1,⋯,i _ n$ と一続きの数列で表す。基底の置換とホッジ双対を示す。

σ=\left(\begin{matrix} 1&⋯&n \\ i_1&⋯&i_n \end{matrix}\right)
\star(dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k})=\mathrm{sgn}(σ)|dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}|^2 dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n}

右辺の基底だけを取り出して、置換とホッジ双対を示す。

σ'=\left(\begin{matrix} 1&⋯&n-k&n-k+1&⋯&n \\ i_{k+1}&⋯&i_n&i_1&⋯&i_k \end{matrix}\right)
\star(dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n})=\mathrm{sgn}(σ')|dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n}|^2 dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}

以上を組み合わせれば、ホッジスターの2回適用となる。単位擬スカラーを $ω$ とすれば:

\star\star(dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k})=\mathrm{sgn}(σ')\mathrm{sgn}(σ)|ω|^2 dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}

同じ基底に戻るため、作用に着目すれば符号と計量が発生する。$s=|ω|^2$ とすれば:

\star\star=\mathrm{sgn}(σ')\mathrm{sgn}(σ)s

置換の積の符号を求める。置換 $A$ の次に置換 $B$ を行う積を $BA$ の順に表記して $σ'$ を分解すれば:

σ'=\left(\begin{matrix} i_1&⋯&i_{n-k}&i_{n-k+1}&⋯&i_n \\ i_{k+1}&⋯&i_n&i_1&⋯&i_k \end{matrix}\right) \underbrace{\left(\begin{matrix} 1&⋯&n \\ i_1&⋯&i_n \end{matrix}\right)}_σ

置換の符号は添え字だけに注目すれば良いので:

\begin{aligned} \mathrm{sgn}(σ') &=\mathrm{sgn} \left(\begin{matrix} 1&⋯&n-k&n-k+1&⋯&n \\ k+1&⋯&n&1&⋯&k \end{matrix}\right)\mathrm{sgn(σ)} \\ &=(-1)^{k(n-k)}\mathrm{sgn(σ)} \\ \mathrm{sgn}(σ')\mathrm{sgn}(σ) &=(-1)^{k(n-k)}\underbrace{\mathrm{sgn(σ)}\mathrm{sgn}(σ)}_1 \\ &=(-1)^{k(n-k)} \end{aligned}

よってホッジスターの2回適用は:

\star\star=\mathrm{sgn}(σ')\mathrm{sgn}(σ)s=(-1)^{k(n-k)}s

クリフォード代数による導出

クリフォード代数によって示す。

\begin{aligned} \star\star η &=\star(\tilde ηi) \\ &=(\widetilde{\tilde ηi})i \\ &=\tilde iηi \\ &=(-1)^{k(n-k)}\tilde iiη \\ &=(-1)^{k(n-k)}|i|^2η \\ \end{aligned}

途中で $η$ と $i$ を交換している。この計算方法を示す。

$i$ の基底の1つを動かして $η$ を飛び越すのに必要な交換の回数:

  • $η$ に含まれる:$k - 1$ 回
  • $η$ に含まれない:$k$ 回

個数を掛けると:

  • $η$ に含まれる:$(k - 1)k$ 回
  • $η$ に含まれない:$k(n-k)$ 回

$(k - 1)k$ は偶数になるため、偶奇の判定には $k(n-k)$ だけを使えば良い。👉付録

ηi=(-1)^{k(n-k)}iη

次元

次元によって場合分けすれば、指数部が単純化できる。

それにはクリフォード代数による導出で現れた $(k - 1)k$ を足すと分かりやすい。

k(n-k)+(k-1)k=kn-k^2+k^2-k=k(n-1)

$k(n-k)$ と $k(n-1)$ の偶奇は等しいことから:👉付録

(-1)^{k(n-k)}=(-1)^{k(n-1)}

奇数次元($n$ が奇数)では $n-1$ が偶数になるため:$(-1)^{k(n-1)}=1$

偶数次元($n$ が偶数)では $k$ の偶奇で決まるため:$(-1) ^ {k(n-1)}=(-1) ^ k$

まとめると:

\star\star =(-1)^{k(n-k)}s =\left\{\begin{array}{rc} s &\text{奇数次元} \\ (-1)^ks &\text{偶数次元} \end{array}\right.

写像

ホッジスターの逆写像 $\star^{-1}$ を考える。

2回適用の節で求めたホッジ双対を再掲する。

\begin{aligned} \star(dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k})&=\mathrm{sgn}(σ)|dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}|^2 dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n} \\ \star(dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n})&=\mathrm{sgn}(σ')|dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n}|^2 dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k} \end{aligned}

ここから逆写像を作る。$\mathrm{sgn}$ は $±1$ のどちらかのため逆数が変化しない。

\begin{aligned} \star^{-1}(dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n}) &=\frac{\mathrm{sgn}(σ)}{|dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}|^2}dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k} \\ \star^{-1}(dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}) &=\frac{\mathrm{sgn}(σ')}{|dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n}|^2}dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n} \\ &=\frac{(-1)^{k(n-k)}\mathrm{sgn}(σ)}{|dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n}|^2}dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n} \end{aligned}

$dx _ {i _ 1}∧⋯∧dx _ {i _ k}$ に対するホッジスターとその逆写像を並べれば:

\begin{aligned} \star(dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k})&=\mathrm{sgn}(σ)|dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}|^2 dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n} \\ \star^{-1}(dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}) &=\frac{(-1)^{k(n-k)}\mathrm{sgn}(σ)}{|dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n}|^2}dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n} \end{aligned}

基底が直交していれば個々の計量に分解できる。

\begin{aligned} \frac 1{|dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n}|^2} &=\frac 1{|dx_{i_{k+1}}|^2⋯|dx_{i_n}|^2} \\ &=\frac{|dx_{i_1}|^2⋯|dx_{i_k}|^2}{|dx_{i_1}|^2⋯|dx_{i_k}|^2|dx_{i_{k+1}}|^2⋯|dx_{i_n}|^2} \\ &=\frac 1 s |dx_{i_1}|^2⋯|dx_{i_k}|^2 \end{aligned}

これによってホッジスターの逆写像は符号の補正で表せる。

\begin{aligned} \star^{-1}(dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}) &=(-1)^{k(n-k)}\frac 1 s \mathrm{sgn}(σ)|dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}|^2 dx_{i_{k+1}}∧⋯∧dx_{i_n} \\ &=(-1)^{k(n-k)}\frac 1 s\star(dx_{i_1}∧⋯∧dx_{i_k}) \end{aligned}

左辺と右辺の基底は同じため、作用素の関係だけを取り出せる。

\star^{-1} =(-1)^{k(n-k)}s^{-1}\star =\left\{\begin{array}{rc} s^{-1}\star &\text{奇数次元} \\ (-1)^ks^{-1}\star &\text{偶数次元} \end{array}\right.

周期性

$s=|ω|^2$ が $±1$ のどちらかであれば $s=s ^ {-1}$ となり、逆写像は符号だけの違いとなる。

\star^{-1}=(-1)^{k(n-k)}s\star

Wikipedia双対性にはこちらが掲載されている。

{\begin{cases}\star ^{{-1}}:\Lambda ^{k}\to \Lambda ^{{n-k}}\\η \mapsto (-1)^{{k(n-k)}}s{\star η}\end{cases}}

ホッジスターの2回適用も符号だけが変化する。

\star\star =(-1)^{k(n-k)}s =\left\{\begin{array}{rc} s &\text{奇数次元} \\ (-1)^ks &\text{偶数次元} \end{array}\right.

写像と2回適用を見比べれば、3回適用が逆写像と等しいことが分かる。

\star^{-1} =(\star\star)\star =(-1)^{k(n-k)}s\star =\left\{\begin{array}{rc} s\star &\text{奇数次元} \\ (-1)^ks\star &\text{偶数次元} \end{array}\right.

これはホッジスターが周期性を持つことを表している。

$\star\star=1$:ホッジスターを2回適用すれば元に戻る。(周期2)

$\star\star=-1$:ホッジスターを4回適用すれば元に戻る。(周期4)

付録

符号の計算で偶奇を調べるのは 2 で割った余りを見ている。この種の計算は 2 を法とする合同式と呼ばれる。

$k$ を整数とすると、次の関係が成り立つ。

k+k≡0\ (\mathrm{mod}\ 2) \\ k²≡k\ (\mathrm{mod}\ 2)

今回出て来た式なども機械的に計算できる。(mod 2) の表記は省略する。

k(k-1)=k^2-k≡k-k=0 \\ k(k+1)=k^2+k≡k+k≡0 \\ k(n-k)=kn-k^2≡kn-k=k(n-1)