左内積とウェッジ積の交換を調べます。
α⊏(β⊏γ)=(α∧β)⊏γ=(-1)^{pq}β⊏(α⊏γ)
シリーズの記事です。
- ホッジ双対とクリフォード代数
- マルチベクトルの内積
- 余微分の定義を追う
- 2~4次元で余微分を計算
- 2~4次元で余微分とディラック作用素を比較
- 外積代数と左内積
- 余微分とディラック作用素の内積部分
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- 余微分のライプニッツ則
目次
概要
p-ベクトル $α$ と q-ベクトル $β$ の左内積を定義します。
α⊏β:=(-1)^{p(q-1)}\star^{-1}(α∧\star β)
符号を無視すれば基底の差集合です。イメージを示します。
α⊏β\ →\ β-α
r-ベクトル $γ$ を追加して、左内積をネストさせます。
α⊏(β⊏γ)\ →\ (γ-β)-α=γ-β-α
次のように読み替えられないでしょうか。
γ-β-α=γ-(α+β)\ →\ (α∧β)⊏γ
この発想で以下を示すのが今回の目的です。
α⊏(β⊏γ)=(α∧β)⊏γ
左内積は結合則を満たさないことが察せられます。
導出
r-ベクトル $γ$ の基底の添え字を $i _ 1⋯i _ r$ とします。
γ=e_{i_1}⋯e_{i_r}
左内積が $0$ にならない条件より、$α$ と $β$ の基底は $γ$ の基底に含まれ、$α$ と $β$ に共通する基底はありません。
p-ベクトル $α$ と q-ベクトル $β$ の基底の添え字を $i _ {a _ 1}⋯i _ {a _ p},\ i _ {b _ 1}⋯i _ {b _ q}$ として、それぞれ相異なる $i _ 1⋯i _ r$ の要素を指します。まとめて $i _ a,\ i _ b$ と表記します。
縮約できるように $γ$ の基底を並べ替えて $γ'$ とします。ハットは取り除かれた要素を表し、実際にはバラバラに存在していますが便宜上まとめます。チルダは逆順です。
\begin{aligned}
σ&=\left(\begin{matrix}
i_1&⋯&⋯&⋯&⋯&⋯&⋯&⋯&&&⋯&i_n \\
i_{b_q}&⋯&i_{b_1}&i_{a_p}&⋯&i_{a_1}&i_1&⋯&\widehat{i_a}&\widehat{i_b}&⋯&i_n
\end{matrix}\right) \\
γ'&=\mathrm{sgn}(σ)γ \\
&=\mathrm{sgn}(σ)e_{i_1}⋯e_{i_r} \\
&=e_{i_{b_q}}⋯e_{i_{b_1}}e_{i_{a_p}}⋯e_{i_{a_1}}e_{i_1}⋯\widehat{e_{i_a}}\,\widehat{e_{i_b}}⋯e_{i_n} \\
&=\tilde β\tilde α e_{i_1}⋯\widehat{e_{i_a}}\,\widehat{e_{i_b}}⋯e_{i_n}
\end{aligned}
$γ'$ を使って $α⊏(β⊏γ)=(α∧β)⊏γ$ を示します。
\begin{aligned}
α⊏(β⊏γ)
&=\mathrm{sgn}(σ)α⊏(β⊏γ') \\
&=\mathrm{sgn}(σ)α⊏\{β⊏(\tilde β\tilde α e_{i_1}⋯\widehat{e_{i_a}}\,\widehat{e_{i_b}}⋯e_{i_n})\} \\
&=\mathrm{sgn}(σ)|β|^2α⊏(\tilde α e_{i_1}⋯\widehat{e_{i_a}}\,\widehat{e_{i_b}}⋯e_{i_n}) \\
&=\mathrm{sgn}(σ)|α|^2|β|^2e_{i_1}⋯\widehat{e_{i_a}}\,\widehat{e_{i_b}}⋯e_{i_n} \\
(α∧β)⊏γ
&=\mathrm{sgn}(σ)(α∧β)⊏γ' \\
&=\mathrm{sgn}(σ)(αβ)⊏(\tilde β\tilde α e_{i_1}⋯\widehat{e_{i_a}}\,\widehat{e_{i_b}}⋯e_{i_n}) \\
&=\mathrm{sgn}(σ)|α|^2|β|^2e_{i_1}⋯\widehat{e_{i_a}}\,\widehat{e_{i_b}}⋯e_{i_n} \\
&=α⊏(β⊏γ)
\end{aligned}
クリフォード代数の手法で計算できるため、並べ替えて符号を括り出せば直観的に縮約できます。
左内積の結合を変更するとウェッジ積に交換すると解釈できます。
交換
ウェッジ積の交換はグレードに応じて符号が変化します。
α∧β=(-1)^{pq}β∧α
これを使えば $α⊏(β⊏γ)$ の $α$ と $β$ が交換できます。
α⊏(β⊏γ)=(α∧β)⊏γ=(-1)^{pq}(β∧α)⊏γ=(-1)^{pq}β⊏(α⊏γ)