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時間遅延とラグランジアン

運動エネルギーと重力ポテンシャルが時間遅延に与える影響を考察し、そこからラグランジアンの形式を導きます。

※ 厳密な議論ではありません。思い付きのメモ以上のものではありません。

シリーズの記事です。

  1. 時間変換における基底と成分
  2. 古典力学と特殊相対論から計算する重力による時間遅延
  3. GPS 衛星の時間のずれ
  4. 時間遅延とラグランジアン ← この記事

目次

時間遅延

前回までの記事で見たように、脱出速度は運動エネルギー $T$ と重力ポテンシャル $U$ の関係から導かれます。

\begin{aligned}
0 &= T + U \\
T &= -U
\end{aligned}

この関係は、運動エネルギー $T$ と重力ポテンシャルの符号反転 $-U$ による時間遅延の寄与が等価なことを示唆します。

ラグランジアン

※ 本記事では重力ポテンシャルのみを考察対象とし、他のポテンシャルが時間遅延に与える影響については対象外とします。

$T$$-U$ による時間遅延の寄与が等価だと仮定して、これらを足し合わせることでラグランジアンの形式が得られます。

T+(-U)=T-U=L

このように、時間遅延の考察から、ルジャンドル変換を経由せずにラグランジアンの形式が導かれます。

  • 速度が増加(時間遅延も増加) → 運動エネルギーが増加 → ラグランジアンが増加
  • 重力が増加(時間遅延も増加) → ポテンシャルが負に増加 → ラグランジアンが増加

ラグランジアンと時間遅延の関係が示唆されます。

作用積分と時間遅延

作用積分ラグランジアンの時間積分として定義されます。👉関連記事

S = \int_{t_1}^{t_2} L \, dt

これを見て思い付いたことをメモします。

これはあまりにエキセントリックなので、この辺でやめておきます。

※ 興味があれば、この後で引用する Austin 2022 を読んでみると良いでしょう。

参考

同じような議論を展開している論文があります。ここで興味深いのは、運動エネルギーに特殊相対性理論の形式を使用すれば、ポテンシャルで置き換えたときに一次近似になる点です。

Austin 2017: Austin, R. W. (2017). Gravitational Time Dilation Derived from Special Relativity and Newtonian Gravitational Potential. European Scientific Journal, ESJ, 13(3), 447.

この論文において、運動エネルギーは特殊相対論の形式を使用しています。

T=E_0(\gamma-1) \tag{3}
\gamma=1+\frac{T}{E_0} \tag{4}

(10) に基づき、(4) の $T$ を (11) で $V_G$ に置き換えます。

\text{Time Dilation Scalar} = 1+\frac{T+V}{E_0} \tag{10}
\varphi=1+\frac{V_G}{E_0} \tag{11}
\varphi=1-\frac{GM^2}{rMc^2}
\xrightarrow{yields}
1-\frac{GM}{rc^2} \tag{12}

(12) はシュワルツシルト解と一次のオーダーで一致します。

x=\frac{M}{r} \tag{15}
\sqrt{1-\frac{2Gx}{c^2}}
\xrightarrow{yields}
1-\frac{Gx}{c^2}-\frac{G^2x^2}{2c^4}+O(x^3) \tag{16}
\varphi=1-\frac{Gx}{c^2}\tag{17}

Equations (16) and (17) are equal to first order. The newly derived transformation value of φ, (equation 12) is an energy based time dilation due to a gravitational potential energy. The transformation is first order accurate to current accepted theory.

日本語訳:式 (16) と (17) は一次のオーダーで等しい。新たに導出された φ の変換値(式 12)は、重力ポテンシャルエネルギーに基づく時間遅延である。この変換は、現在の理論では一次の精度である。

問題点

Austin 2017 の (4) は $\gamma \ge 1$、(12) は $\varphi \le 1$ で、因子の効果が逆です。これは (10) の $T+V$ に基づいて $T$$V_G$ に置き換えたことに起因します。

その後の同著者の論文では、その点は修正されています。

Austin 2022: Austin, R. (2022) Scalar Field Model Provides a Possible Bridge between General Relativity and Quantum Mechanics. International Journal of Astronomy and Astrophysics, 12, 247-257.

A=1+\frac{T_G-V_G}{E_0} \tag{3}

ただし (10) で 2 が抜けています。

t=\frac1{\sqrt{1-\frac{\begin{aligned}\color{red}{2}\end{aligned}GM}{rc^2}}}\tau \tag{10}

Austin 2022 は、私が打ち切ったような前衛的な議論を展開しています。