一次変数変換から計算規則を抽出して行列の積を定義します。
『行列と代数系』シリーズの記事です。
目次
行列の積
$x,y$ は別の変数 $x',y'$ の一次式で表されるとします。
\tag{1}
\begin{cases}
x=ax'+by' \\
y=cx'+dy'
\end{cases}
この連立方程式は変数 $x',y'$ を $x,y$ に変換する操作を表します。一次式のため一次変数変換と呼びます。
更に、$x',y'$ は別の変数 $x'',y''$ の一次式で表されるとします。
\tag{2}
\begin{cases}
x'=a'x''+b'y'' \\
y'=c'x''+d'y''
\end{cases}
$(1)$ に $(2)$ を代入すると、$x',y'$ を経由せずに直接 $x,y$ を $x'',y''$ で表す式が得られます。この操作を変換の合成と呼びます。
\tag{3}
\begin{cases}
x=a(a'x''+b'y'')+b(c'x''+d'y'')=(aa'+bc')x''+(ab'+bd')y'' \\
y=c(a'x''+b'y'')+d(c'x''+d'y'')=(ca'+dc')x''+(cb'+dd')y''
\end{cases}
$(1),(2),(3)$ から右辺の係数を抜き出します。
\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}a'&b'\\c'&d'\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}aa'+bc'&ab'+bd'\\ca'+dc'&cb'+dd'\end{pmatrix}
変換の合成を積の関係に見立てることで、行列の積の定義が得られます。
行列の積
\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}a'&b'\\c'&d'\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}aa'+bc'&ab'+bd'\\ca'+dc'&cb'+dd'\end{pmatrix}
これは表記を簡略化して計算に集中できるようにする工夫だと考えられます。
謝辞
高瀬正仁先生の朝日カルチャーセンターの講座を参考にさせていただきました。ありがとうございました。
・朝カル講座報告(8月18日)(4)
— 高瀬正仁_imfo (@M_Takase_imfo) 2019年8月28日
√79 (mod.65)の値+12に属する65の表現
2次形式の変換を繰り返して、表現を与える一組の値
x=-22、y=23
が見つかります。 pic.twitter.com/0uTJ96ezkA
行列を習い始めた頃、何を計算しているのか分からないまま計算方法だけを覚えました。今回の記事は当時の自分に向けて書きました。