DeepL でフランス語からの直接翻訳と英語経由の重訳を比較します。
シリーズの記事です。
- 機械翻訳によるプルーストの日本語訳を比較
- 機械翻訳によるプルーストの英訳を比較
- DeepLによるプルーストの重訳を比較 ← この記事
- DeepLによる重訳の有効性を評価
- 複数の機械翻訳を組み合わせて訳文を作る
- プルースト『失われた時を求めて』冒頭
目次
概要
プルースト『失われた時を求めて』の特徴については初回の記事を参照してください。
Project Gutenberg で公開されているフランス語原文と英訳を使用します。
参考訳として初回の記事で各種機械翻訳をつなぎ合わせて修正した翻訳を使用します。
比較
DeepL による直接翻訳と、2系統の間接翻訳(重訳)を比較します。
- 【原文】 → 【DeepL1】日本語訳
- 【原文】 → 【DeepL2】英訳 → 【DeepL3】日本語訳
- 既存の【英訳】 → 【DeepL4】日本語訳
初回の記事で見たように DeepL では長い文章を日本語に翻訳する際に脱落が発生するため、改行を入れることで対策しています。
また、翻訳の重複が生じた個所は手動で修正しています。(詳細は後述)
原文 | Longtemps, je me suis couché de bonne heure. |
DeepL1 | 長い間、早々に寝てしまいました。 |
DeepL2 | For a long time, I went to bed early. |
DeepL3 | 長い間、私は早く寝た。 |
英訳 | For a long time I used to go to bed early. |
DeepL4 | 長い間、私は早く寝るようにしていました。 |
参考訳 | 長い間、私は早く寝ました。 |
原文 | Parfois, à peine ma bougie éteinte, mes yeux se fermaient si vite que je n'avais pas le temps de me dire: «Je m'endors.» |
DeepL1 | 時々、ロウソクが消えるとすぐに目が閉じてしまい、"眠りに落ちる "と言う時間がないほどでした。 |
DeepL2 | Sometimes, as soon as my candle was out, my eyes would close so fast I didn't have time to say, "I'm falling asleep." |
DeepL3 | 時々、ロウソクの火が消えるとすぐに目が閉じてしまい、"眠りに落ちる "と言う暇もありませんでした。 |
英訳 | Sometimes, when I had put out my candle, my eyes would close so quickly that I had not even time to say "I'm going to sleep." |
DeepL4 | 時々、ロウソクの火を消すと、目がすぐに閉じてしまい、「もう寝ます」と言う暇もありませんでした。 |
参考訳 | 時々、ろうそくが消えたとたん、目が早く閉じてしまって、「眠ってしまいます。」と自分に言い聞かせる時間がないことがありました。 |
原文 | Et, une demi-heure après, la pensée qu'il était temps de chercher le sommeil m'éveillait; |
DeepL1 | そして30分後、そろそろ寝る時間だと思ったことで目が覚めた。 |
DeepL2 | Half an hour later, the thought that it was time to go to sleep woke me up; |
DeepL3 | 30分後、そろそろ寝る時間だと思って目が覚めた。 |
英訳 | And half an hour later the thought that it was time to go to sleep would awaken me; |
DeepL4 | そして30分後には、もう寝る時間だと思うと目が覚めてしまいます。 |
参考訳 | そして30分後、そろそろ寝る時間だと思ったことで目が覚めた。 |
原文 | je voulais poser le volume que je croyais avoir encore dans les mains et souffler ma lumière; |
DeepL1 | まだ手にしていると思っていた音量を下げて、ライトを吹き消したかった。 |
DeepL2 | I wanted to put down the volume that I thought I still had in my hands and blow out my light; |
DeepL3 | まだ手にしていると思っていた音量を下げて、電気を消してしまいたいと思った。 |
英訳 | I would try to put away the book which, I imagined, was still in my hands, and to blow out the light; |
DeepL4 | まだ手に持っている本を片付けようとしたり、電気を消そうとしたりしていました。 |
参考訳 | まだ手にしていると思っていた本を置いて、明かりを消したかったのです。 |
原文 | je n'avais pas cessé en dormant de faire des réflexions sur ce que je venais de lire, mais ces réflexions avaient pris un tour un peu particulier; |
DeepL1 | 眠っている間に読んだことを考えるのはやめられなかったが、その考えは奇妙な方向に向かっていた。 |
DeepL2 | I had not stopped thinking in my sleep about what I had just read, but those thoughts had taken a peculiar turn; |
DeepL3 | 今読んだ本のことは寝ている間も考えていましたが、その考えは奇妙な方向へと変わっていました。 |
英訳 | I had been thinking all the time, while I was asleep, of what I had just been reading, but my thoughts had run into a channel of their own, |
DeepL4 | 眠っている間、私は今読んでいた本のことをずっと考えていましたが、私の考えはそれ自体のチャンネルに入ってしまっていました。 |
参考訳 | 眠っている間、読んだばかりのことを考えるのはやめられなかったが、その考えは奇妙な方向に向かっていた。 |
原文 | il me semblait que j'étais moi-même ce dont parlait l'ouvrage: une église, un quatuor, la rivalité de François Ier et de Charles Quint. |
DeepL1 | 教会、カルテット、フランシスコ1世とシャルル5世のライバル関係など、私自身がこの本の対象になっているように思えました。 |
DeepL2 | it seemed to me that I myself was what the book was about: a church, a quartet, the rivalry between Francis I and Charles V. |
DeepL3 | 教会、カルテット、フランシスコ1世とシャルル5世の対立など、この本の内容は私自身のことであるように思えたのです。 |
英訳 | until I myself seemed actually to have become the subject of my book: a church, a quartet, the rivalry between François I and Charles V. |
DeepL4 | 教会、カルテット、フランソワ1世とシャルル5世の対立など、私自身が本の主題になっているように思えた。 |
参考訳 | 教会、カルテット、フランシスコ1世とシャルル5世のライバル関係など、私自身がこの本の対象になっているように思えました。 |
原文 | Cette croyance survivait pendant quelques secondes à mon réveil; |
DeepL1 | この信念が生き残ったのは、目が覚めてから数秒後のことだった。 |
DeepL2 | This belief survived for a few seconds when I awoke; |
DeepL3 | この信念は、私が目を覚ましたときに数秒だけ生き残った。 |
英訳 | This impression would persist for some moments after I was awake; |
DeepL4 | この印象は目が覚めてからもしばらく続きました。 |
参考訳 | この信念は私が目覚めたとき数秒間続きました。 |
原文 | elle ne choquait pas ma raison mais pesait comme des écailles sur mes yeux et les empêchait de se rendre compte que le bougeoir n'était plus allumé. |
DeepL1 | それは私の理性にショックを与えなかったが、それは私の目に体重計のように重くのしかかり、キャンドルホルダーがもはや灯されていないことに気づくのを防いだ。 |
DeepL2 | it did not shock my reason, but it weighed like scales on my eyes and prevented them from realizing that the candlestick was no longer lit. |
DeepL3 | それは私の理性にショックを与えなかったが、それは私の目に体重計のように重くのしかかり、燭台にはもはや火がついていないことに気づかないようにしていた。 |
英訳 | it did not disturb my mind, but it lay like scales upon my eyes and prevented them from registering the fact that the candle was no longer burning. |
DeepL4 | それは私の心を乱すものではなかったが、私の目には鱗のように重くのしかかり、ろうそくがもう燃えていないという事実を目にすることを妨げていた。 |
参考訳 | それは私の理性に衝撃を与えませんでしたが、私の目がうろこのように重くなり、ろうそくがもう点灯していないことに気付かなかったのです。 |
原文 | Puis elle commençait à me devenir inintelligible, comme après la métempsycose les pensées d'une existence antérieure; |
DeepL1 | そして、それは前の存在の思考がメタサイコシスの後のように、私には理解できないものになり始めました。 |
DeepL2 | Then it began to become unintelligible to me, like after the metempsychosis the thoughts of a former existence; |
DeepL3 | それからそれは私には理解できないようになり始めた、metempsychosisの後に前の存在の思考のように。 |
英訳 | Then it would begin to seem unintelligible, as the thoughts of a former existence must be to a reincarnate spirit; |
DeepL4 | そしてそれは、前の存在の思考が転生した精神になければならないように、理解できないように見えるようになるだろう。 |
参考訳 | それから、輪廻転生の後に、前世の存在についての考えが理解できなくなったように、私は理解しにくくなり始めました。 |
原文 | le sujet du livre se détachait de moi, j'étais libre de m'y appliquer ou non; |
DeepL1 | 本の主題が私から切り離され、私はそれに自分自身を適用するかどうか自由でした。 |
DeepL2 | the subject of the book was detached from me, I was free to apply myself to it or not; |
DeepL3 | 本の主題は私から切り離され、私はそれに自分自身を適用するかどうかを自由にしていました。 |
英訳 | the subject of my book would separate itself from me, leaving me free to choose whether I would form part of it or no; |
DeepL4 | 私の本の主題は私からそれ自体を分離し、私はそれの一部を形成するかどうかを選択する自由を残すだろう。 |
参考訳 | 本の主題は私から切り離され、私はそれに自分自身を適用するかしないかは自由であった。 |
原文 | aussitôt je recouvrais la vue et j'étais bien étonné de trouver autour de moi une obscurité, douce et reposante pour mes yeux, mais peut-être plus encore pour mon esprit, à qui elle apparaissait comme une chose sans cause, incompréhensible, comme une chose vraiment obscure. |
DeepL1 | 私はすぐに視力を回復し、私の周りの暗闇を見つけて愕然としました。私の目には柔らかくて安らかな闇でしたが、おそらくそれ以上に私の心には、それが原因のないもの、理解できないもの、本当に不明瞭なものとして現れました。 |
DeepL2 | at once I recovered my sight and I was quite astonished to find around me a darkness, soft and restful for my eyes, but perhaps even more for my spirit, to whom it appeared like a thing without cause, incomprehensible, like a really obscure thing. |
DeepL3 | すぐに私は視力を回復し、私の周りには、私の目には柔らかくて安らかな暗闇があり、おそらくそれ以上に私の精神にとっては、それが原因のないもののように見え、理解できない、本当に不明瞭なもののように見えたので、私は非常に驚きました。 |
英訳 | and at the same time my sight would return and I would be astonished to find myself in a state of darkness, pleasant and restful enough for the eyes, and even more, perhaps, for my mind, to which it appeared incomprehensible, without a cause, a matter dark indeed. |
DeepL4 | そして同時に私の視力が戻り、私は自分自身が暗闇の中にいるのを見つけて愕然とするだろう、目には十分に快適で安らぎがあり、おそらくそれ以上に、私の心には理解できないように見えた、原因もなく、本当に暗い問題。 |
参考訳 | 目が見えるようになるとすぐに、まわりには暗闇が見えて驚きました。目には甘くて安らぎに満ちていましたが、心にはそれ以上のものがありました。原因のない不可解な何か、本当に暗い何かのように見えたのです。 |
原文 | Je me demandais quelle heure il pouvait être; |
DeepL1 | 何時頃になるのかなと思っていました。 |
DeepL2 | I wondered what time it could be; |
DeepL3 | 私はそれが何時なのだろうかと思った。 |
英訳 | I would ask myself what o'clock it could be; |
DeepL4 | 私はそれが何時である可能性があります自分自身に尋ねるだろう。 |
参考訳 | 何時になるのだろうかと思った。 |
原文 | j'entendais le sifflement des trains qui, plus ou moins éloigné, comme le chant d'un oiseau dans une forêt, relevant les distances, me décrivait l'étendue de la campagne déserte où le voyageur se hâte vers la station prochaine; |
DeepL1 | 電車の汽笛が聞こえてきて、多かれ少なかれ、森の中の鳥の鳴き声のように、距離を取りながら、旅人が次の駅へと急ぐ荒涼とした田園地帯の広さを私に伝えてくれました。 |
DeepL2 | I heard the whistling of trains which, more or less distant, like the song of a bird in a forest, raising the distances, described to me the extent of the deserted countryside where the traveller hurries towards the next station; |
DeepL3 | 電車の汽笛が聞こえてきましたが、それは多かれ少なかれ遠く、森の中の鳥のさえずりのように、距離を伸ばして、旅人が次の駅に向かって急いでいる、さびれた田舎の広さを私に説明してくれました。 |
英訳 | I could hear the whistling of trains, which, now nearer and now farther off, punctuating the distance like the note of a bird in a forest, shewed me in perspective the deserted countryside through which a traveller would be hurrying towards the nearest station: |
DeepL4 | 電車の汽笛が聞こえてきたが、それは今は近く、今は遠く、森の中の鳥の鳴き声のように距離を刻み、旅人が最寄り駅に向かって急いでいるであろう荒涼とした田園地帯を遠近法で私に見せてくれた。 |
参考訳 | 列車の汽笛の音が聞こえていたが、その汽笛は、多かれ少なかれ、森の中の鳥のさえずりのように、距離を際立たせ、次の駅へと旅人が急ぐような、さびれた田舎の広さを物語っていた。 |
原文 | et le petit chemin qu'il suit va être gravé dans son souvenir par l'excitation qu'il doit à des lieux nouveaux, à des actes inaccoutumés, à la causerie récente et aux adieux sous la lampe étrangère qui le suivent encore dans le silence de la nuit, à la douceur prochaine du retour. |
DeepL1 | そして、彼が辿る小さな道は、新しい場所、珍しい行為、最近の会話や外国のランプの下での別れ、夜の静けさの中でまだ彼を追いかけてくる、帰りの甘美さへの興奮によって、彼の記憶に刻まれることでしょう。 |
DeepL2 | and the little road he follows will be engraved in his memory by the excitement he owes to new places, to unusual acts, to the recent talk and the farewells under the foreign lamp which still follow him in the silence of the night, to the coming sweetness of the return. |
DeepL3 | そして彼が辿る小さな道は、新しい場所や珍しい行為、最近の会話や外国のランプの下での別れ、夜の静けさの中でまだ彼を追いかけてくる、帰りの甘美さへの興奮によって、彼の記憶に刻まれることになるだろう。 |
英訳 | the path that he followed being fixed for ever in his memory by the general excitement due to being in a strange place, to doing unusual things, to the last words of conversation, to farewells exchanged beneath an unfamiliar lamp which echoed still in his ears amid the silence of the night; and to the delightful prospect of being once again at home. |
DeepL4 | 見知らぬ場所にいることによる興奮、変わったことをすることによる興奮、会話の最後の言葉、夜の静けさの中で耳に響く見知らぬランプの下で交わされた別れ、そして再び家に帰ってくるという楽しい展望が、彼の記憶の中に永遠に固定されているのです。 |
参考訳 | そして彼がたどった小さな道は、彼の記憶に刻まれるだろう。新しい場所、変わった行為、最近の会話、そして夜の静寂の中で彼の後をついてくる異郷のランプの下での別れ、来るべき帰りの甘美さへの興奮によって。 |
重複
同じセンテンスが重複して翻訳された個所がありました。
※ 比較表への引用時に手動で除去しました。
Then it began to become unintelligible to me, like after the metempsychosis the thoughts of a former existence; the subject of the book was detached from me, I was free to apply myself to it or not; at once I recovered my sight and I was quite astonished to find around me a darkness, soft and restful for my eyes, but perhaps even more for my spirit, to whom it appeared like a thing without cause, incomprehensible, like a really obscure thing. I wondered what time it could be; |
その後、それは私には理解できないものになり始めた、まるで超精神病の後に前の存在の思考のように。 本の主題は私から切り離され、私はそれに自分自身を適用するかどうかを自由にしていました。 本の主題は私から切り離され、私は自由にそれを適用するかどうかを決定した。すぐに私は視力を回復し、私の周りの暗闇を見つけて、私の目には柔らかくて安らかであったが、おそらくそれ以上に私の精神にとっては、それが原因のないもののように、理解できない、本当に不明瞭なもののように見えた。 私はそれが何時なのだろうかと思った。 |
問題個所の前後の行を取り除くと、問題が再現しなくなります。
感想
フランス語からの直接翻訳と英語を経由した間接翻訳とでは結果が異なります。
間接翻訳(DeepL3)の方が分かりやすくなった個所があります。
DeepL1 | 眠っている間に読んだことを考えるのはやめられなかったが、その考えは奇妙な方向に向かっていた。 |
DeepL3 | 今読んだ本のことは寝ている間も考えていましたが、その考えは奇妙な方向へと変わっていました。 |
逆に分かりにくくなった個所もあります。(どちらもあまりピンと来ない訳文ではありますが)
DeepL1 | 電車の汽笛が聞こえてきて、多かれ少なかれ、森の中の鳥の鳴き声のように、距離を取りながら、旅人が次の駅へと急ぐ荒涼とした田園地帯の広さを私に伝えてくれました。 |
DeepL3 | 電車の汽笛が聞こえてきましたが、それは多かれ少なかれ遠く、森の中の鳥のさえずりのように、距離を伸ばして、旅人が次の駅に向かって急いでいる、さびれた田舎の広さを私に説明してくれました。 |
人の手による英訳からの重訳(DeepL4)は、英訳の際に訳しやすい単語が選択されていれば、訳文にも反映されます。
DeepL1 | まだ手にしていると思っていた音量を下げて、ライトを吹き消したかった。 |
DeepL3 | まだ手にしていると思っていた音量を下げて、電気を消してしまいたいと思った。 |
DeepL4 | まだ手に持っている本を片付けようとしたり、電気を消そうとしたりしていました。 |
正直、どれも一長一短ですが、直接翻訳と間接翻訳を見比べることに一定の意味はありそうです。
次回の記事では重訳の有効性を数値化して評価を試みます。