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余微分のライプニッツ則

微分ライプニッツ則に相当する式を求めます。

δ(η⊏ζ)=-dη⊏ζ+(-1)^p η⊏δζ

シリーズの記事です。

  1. ホッジ双対とクリフォード代数
  2. マルチベクトルの内積
  3. 余微分の定義を追う
  4. 2~4次元で余微分を計算
  5. 2~4次元で余微分とディラック作用素を比較
  6. 外積代数と左内積
  7. 余微分とディラック作用素の内積部分
  8. 左内積とウェッジ積の交換
  9. 微分ライプニッツ則 ← この記事

目次

交換

ウェッジ積の交換はグレードに応じて符号が変化します。

p-ベクトル $α$ と q-ベクトル $β$ では:

α∧β=(-1)^{pq}β∧α

内積の結合を変更するとウェッジ積に交換します。

α⊏(β⊏γ)=(α∧β)⊏γ=(-1)^{pq}β⊏(α⊏γ)

微分

q-形式の係数を $f$、基底を $η=dx _ {i _ 1}∧⋯∧dx _ {i _ q}$ とします。

$fη$ の外微分では $d$ が $f$ に作用して 1-形式となり、$η$ とはウェッジ積で結合します。

d(fη)=\underbrace{df}_{\text{1-形式}}∧η

ライプニッツ

ウェッジ積 $fη∧gζ$ と左内積 $fη⊏gζ$ を外微分して、ライプニッツ則を確認します。

ウェッジ積

微分形式を係数 $f,g$ と基底 $η,ζ$ に分離して、p-形式 $fη$ と q-形式 $gζ$ のウェッジ積を計算すると、係数 $fg$ と基底 $η∧ζ$ に分離します。

fη∧gζ=\underbrace{(fg)}_{\text{係数}}\,\underbrace{(η∧ζ)}_{\text{基底}}

微分は係数の全微分と基底とのウェッジ積となります。$d(fη)$ は普通のライプニッツ則で計算します。1-形式 $dg$ と p-形式 $η$ を交換する際に符号が発生します。

\begin{aligned} d(fη∧gζ) &=d\{(fg)(η∧ζ)\} \\ &=d(fg)∧(η∧ζ) \\ &=\{(df)g+f(dg)\}∧η∧ζ \\ &=(df)\underbrace{g∧η}_{\text{交換}}∧ζ+f\underbrace{(dg)∧η}_{\text{交換}}∧ζ \\ &=(df∧η)∧(gζ)+\underbrace{(-1)^p}_{\text{符号}}(fη)∧(dg∧ζ) \\ &=d(fη)∧gζ+(-1)^p fη∧d(gζ) \\ \end{aligned}

係数をまとめて $fη,gζ→η,ζ$ として書き直します。

d(η∧ζ)=dη∧ζ+(-1)^p η∧dζ

内積

あまりきれいな形に整理できません。

\begin{aligned} d(fη⊏gζ) &=d\{(fg)(η⊏ζ)\} \\ &=d(fg)∧(η⊏ζ) \\ &=\{(df)g+f(dg)\}∧(η⊏ζ) \end{aligned}

$η$ と $ζ$ が3次元1-形式の場合、ベクトル解析では以下の公式に相当します。

∇(A⋅B)=(A⋅∇)B+(B⋅∇)A+A×(∇×B)+B×(∇×A)

微分

$fη$ の余微分では $d$ が $f$ に作用して 1-形式となり、$η$ とは左内積で結合して符号反転します。

δ(fη)=-\underbrace{df}_{\text{1-形式}}⊏η

ライプニッツ

ウェッジ積 $fη∧gζ$ と左内積 $fη⊏gζ$ を余微分して、ライプニッツ則を確認します。

ウェッジ積

微分は係数の全微分と基底との左内積の符号反転となります。$d(fη)$ は普通のライプニッツ則で計算します。

\begin{aligned} δ(fη∧gζ) &=δ\{(fg)(η∧ζ)\} \\ &=-d(fg)⊏(η∧ζ) \\ &=-\{(df)g+f(dg)\}⊏(η∧ζ) \end{aligned}

これ以上は整理できないようです。

$η$ と $ζ$ が3次元1-形式の場合、$δ=\star d\star$ よりベクトル解析では以下の公式に相当します。

∇×(A×B)=A (∇⋅B)−B (∇⋅A)+(B⋅∇)A−(A⋅∇)B

例としてユークリッド空間2次元で $η=dx,\ ζ=dy$ として計算を続けてみます。

\begin{aligned} δ(f\,dx∧g\,dy) &=-\left\{ \left(\frac{∂f}{∂x}dx+\frac{∂f}{∂y}dy\right)g +f\left(\frac{∂g}{∂x}dx+\frac{∂g}{∂y}dy\right) \right\}⊏(dx∧dy) \\ &=-\left\{ \left(\frac{∂f}{∂x}g+f\frac{∂g}{∂x}\right)dx +\left(\frac{∂f}{∂y}g+f\frac{∂g}{∂y}\right)dy \right\}⊏(dx∧dy) \\ &=-\left\{ \left(\frac{∂f}{∂x}g+f\frac{∂g}{∂x}\right)dy -\left(\frac{∂f}{∂y}g+f\frac{∂g}{∂y}\right)dx \right\} \\ &= \left(\frac{∂f}{∂y}g+f\frac{∂g}{∂y}\right)dx -\left(\frac{∂f}{∂x}g+f\frac{∂g}{∂x}\right)dy \end{aligned}

以下の記事にはライプニッツ則はないと書かれています。

The Codifferential « The Unapologetic Mathematician

but there is no version of the Leibniz rule that can account for the second and third terms in this latter expansion. Oh well.

なお、類似の計算例が示されていますが、3次元で計算している点が異なります。しかし次元を変えても増えた項が消えて結果は変わらないため、余微分の符号が間違っているようです。3次元2-形式では $δ=\star d\star$ です。

内積

ウェッジ積との交換を駆使するとそれらしい形が出て来ます。

\begin{aligned} δ(fη⊏gζ) &=δ\{(fg)(η⊏ζ)\} \\ &=-d(fg)⊏(η⊏ζ) \\ &=-\{(df)g+f(dg)\}⊏(η⊏ζ) \\ &=-[\{(df)g+f(dg)\}∧η]⊏ζ \\ &=-\{(df)g∧η+f(dg)∧η\}⊏ζ \\ &=-\{(df)g∧η\}⊏ζ+\{f(dg)∧η\}⊏ζ \\ &=-(df∧η)⊏gζ-(-1)^p(fη∧dg)⊏ζ \\ &=-(df∧η)⊏gζ-(-1)^pfη⊏(dg⊏ζ) \\ &=-d(fη)⊏gζ+(-1)^pfη⊏δ(gζ) \\ \end{aligned}

係数をまとめて $fη,gζ→η,ζ$ として書き直します。

δ(η⊏ζ)=-dη⊏ζ+(-1)^p η⊏δζ

微分の由来となった随伴の形に似ています。👉定義を追う

d(η∧\star ζ)=⟨dη,ζ⟩ω-⟨η,δζ⟩ω

何らかの関係はあると思いますが、何か分かれば追記します。

まとめ

以上の結果を係数を分離した形で列挙します。

\begin{aligned} d(fη∧gζ)&=d(fη)∧gζ+(-1)^p fη∧d(gζ) \\ d(fη⊏gζ)&=\{(df)g+f(dg)\}∧(η⊏ζ) \\ δ(fη∧gζ)&=-\{(df)g+f(dg)\}⊏(η∧ζ) \\ δ(fη⊏gζ)&=-d(fη)⊏gζ+(-1)^pfη⊏δ(gζ) \end{aligned}

これらを組み合わせれば幾何積にディラック作用素を適用した結果も得られるでしょう。