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余微分とディラック作用素の内積部分

微分ディラック作用素内積部分は符号が異なります。余微分の計算に含まれる左内積により確認します。

微分はホッジスターの計算が煩雑ですが、ディラック作用素で代用すれば簡略化できます。余微分を外微分と同じくらい気軽に使えるようにすることが目的です。

シリーズの記事です。

  1. ホッジ双対とクリフォード代数
  2. マルチベクトルの内積
  3. 余微分の定義を追う
  4. 2~4次元で余微分を計算
  5. 2~4次元で余微分とディラック作用素を比較
  6. 外積代数と左内積
  7. 微分ディラック作用素内積部分 ← この記事
  8. 左内積とウェッジ積の交換
  9. 余微分のライプニッツ則

ディラック作用素については以下の記事を参照してください。

目次

内積

ホッジ双対による内積を拡張して、クリフォード代数の幾何積の内積部分との対応を定義します。これを左内積と呼びます。

α⊏β:=(-1)^{p(q-1)}\star^{-1}(α∧\star β)

ただし幾何積と一致するのは $α$ の基底が $β$ の基底に含まれるときだけです。それ以外では $0$ となります。

微分

q-形式の係数を $f$、基底を $ξ=dx _ {i _ 1}∧⋯∧dx _ {i _ q}$ とします。

$fξ$ の外微分では $d$ が $f$ に作用して 1-形式となり、$ξ$ とはウェッジ積で結合します。

d(fξ)=\underbrace{df}_{\text{1-形式}}∧ξ

微分

微分はホッジ双対の外微分のホッジ双対を符号調整したものです。

δ =(-1)^k\star^{-1}d\star =(-1)^{n(k-1)-1}s^{-1}\star d\star =\left\{\begin{array}{rc} -s^{-1}\star d\star &\text{偶数次元} \\ (-1)^ks^{-1}\star d\star &\text{奇数次元} \end{array}\right.

ホッジスターの逆写像を用いた定義で q-形式 $fξ$ を余微分します。ホッジスターは $ξ$ に作用して、外微分は $f$ に作用します。

\begin{aligned} δ(fξ) &=(-1)^q\star^{-1}d\star(fξ) \\ &=(-1)^q\star^{-1}(df∧\star ξ) \end{aligned}

これは $p=1,\ α=df,\ β=ξ$ とした左内積とほぼ同じです。

df⊏ξ=(-1)^{q-1}\star^{-1}(df∧\star ξ)

違いは符号だけです。よって次の関係が成り立ちます。

δ(fξ)=-df⊏ξ

※ 余微分は外微分の随伴、左内積はクリフォード代数と由来が異なりますが、符号だけの違いに収まるのは不思議です。もし理由が分かれば追記します。

ディラック作用素

微分は全微分との外積(ウェッジ積)、余微分は全微分との左内積の符号反転です。

\begin{aligned} d(fξ)&=df∧ξ \\ δ(fξ)&=-df⊏ξ \end{aligned}

微分との幾何積としてディラック作用素 $D$ を定義します。$Df$ は全微分で、幾何積により外微分と余微分(符号反転)が表れます。

D(fξ)=(Df)ξ=df∧ξ+df⊏ξ=(d-δ)(fξ)

※ 余微分を符号反転として定義しているというよりも、幾何積として計算した結果に余微分の符号反転が現れます。

計算例

2次元での計算例を示します。計量は $1$ とします。

\begin{aligned} d(f\,dx) &=(df)∧dx =\left(\cancel{\frac{∂f}{∂x}dx}+\frac{∂f}{∂y}dy\right)∧dx =-\frac{∂f}{∂y}dx∧dy \\ δ(f\,dx) &=-(df)⊏dx =-\left(\frac{∂f}{∂x}dx+\cancel{\frac{∂f}{∂y}dy}\right)⊏dx =-\frac{∂f}{∂x} \\ D(f\,dx) &=(Df)dx =\left(\frac{∂f}{∂x}dx+\frac{∂f}{∂y}dy\right)dx =\underbrace{\frac{∂f}{∂x}}_{-δ}\,\underbrace{-\frac{∂f}{∂y}dx\,dy}_d \end{aligned}

微分と余微分の両方を計算する場合、途中までは同じ計算です。外微分で消える項が余微分で残る、つまり項が補完し合っているため、同時に計算できます。

その他の計算例は以下を参照してください。