【お知らせ】プログラミング記事の投稿はQiitaに移行しました。

音声合成による人工言語の読み上げ

ブラウザの音声合成 API を使って8種類の人工言語で主の祈りを読み上げます。

目次

対象

次の人工言語を対象とします。発表順に並んでいます。概要と合わせて後で示す文例を見れば、何となくトレンドのようなものが感じられるかもしれません。

発表 言語名 日本語版 Wikipedia 概要
1879 Volapük ヴォラピュク 初めて一定の支持を得た人工言語。語源の推測が困難なほどに変形されている。ウムラウトがあり発音が難しい。動詞は膠着的。主格・属格・与格・対格がある。
1887 Esperanto エスペラント 現在もっとも有名な人工言語。品詞ごとに語尾が決まっている。一部の子音を字上符で表記する。動詞は膠着的。主格・対格がある。
1907 Ido イド語 エスペラントの改造版。字上符を廃止して、語形をロマンス語に近付けた。対格の使用を緩和。
1922 Interlingue インターリング 品詞ごとに語尾を決めることをやめて、造語法を西洋の言語に近付けた。動詞は迂言的。
1928 Novial ノヴィアル インターリングに似ているが、造語法がより整理された。動詞の迂言法が発達している。
1951 Interlingua インターリングア 語彙が西洋の言語(主にロマンス語)の最大公約数的に選ばれ、一部はラテン語の語形に由来する。動詞は迂言的。
1998 Elefen リングア・フランカ・ノバ スペイン語とフランス語を混ぜて簡略化したような言語。孤立語的でややピジン的。動詞は迂言法で表現する。略称の Elefen は正式名称の頭文字 LFN (el,ef,en) をつなげたもの。
2001 Toki Pona トキポナ 語彙は120語と少なく西洋以外からも取り入れている。孤立語ピジン的。

言語名から各言語版の Wikipedia へリンクしました。(トキポナ版は廃止されたため移転先へリンク)

Wikipediaにどの言語版があるのかは以下にまとめられています。

現時点では人工言語は9言語で、今回の記事では大半をカバーしています。

注意

音声の再生は環境に依存します。Chromium Edge(推奨)と Chrome はデフォルトでオンラインのエンジンが利用できます。その他の環境では以下を参照してください。

以下に選択肢が出ない言語は再生できません。

読み上げ速度

音韻体系が近い別の言語として無理やり読ませているため、いくつか問題があります。

ヴォラピュクはドイツ語として読ませています。

  • アクセントは最終音節にありますが、母音を長くすることで表現しています。実際にそこにアクセントが来るかは音声合成エンジン次第です。
  • 無声音の前や語末の有声音が無声化します。
    【例】/obs/ → /ops/
  • 語末の /d/ が読めないエンジンがあるため、次の単語とつなげました。(いわゆるアンシェヌマン
    【例】 /id obs/ → /i dops/

エスペラントポーランド語として読ませています。

  • アクセントは後ろから2番目の母音にありますが、母音を長くすることで表現しています。実際にそこにアクセントが来るかは音声合成エンジン次第です。

イド語、インターリングインターリングアはイタリア語として読ませています。

  • /h/ が発音できません。
  • /s/ と /z/ の区別が曖昧になります。/z/ は母音間でのみ発音され、母音間の /s/ は ss としたため促音気味になります。
  • イタリア語特有の節回し(イントネーション)で発音されます。
  • アクセントの位置は指定していますが、エンジンによっては反映されないかもしれません。

ノヴィアル、エレフェンはスペイン語として読ませています。

  • /v/ が /b/ として発音されます。

トキポナはカナに変換して日本語として読ませています。

  • トキポナの音韻体系は日本語のサブセットのため、ほぼ問題ありません。

主の祈り

主の祈りは人工言語の文例としてよく使われます。言語名をクリックすると音声が再生されます。

言語ごとと、センテンスごとに各言語を並べたものを示します。

言語ごと

天にましますわれらの父よ、
願わくは御名の尊まれんことを、
御国の来たらんことを、
御旨の天に行わるる如く
地にも行われんことを。
われらの日用の糧を
今日われらに与え給え。
われらが人に赦す如く、
われらの罪を赦し給え。
われらを試みに引き給わざれ、
われらを悪より救い給え。
O Fat obas, kel binol in süls,
paisaludomöz nem ola!
Kömomöd monargän ola!
Jenomöz vil olik,
äs in sül, i su tal!
Bodi obsik vädeliki govolös obes adelo!
E pardolös obes debis obsik,
äs id obs aipardobs debeles obas.
E no obis nindukolös in tendadi;
sod aidalivolös obis de bas.
Patro nia, kiu estas en la ĉielo,
sanktigata estu Via nomo.
Venu Via regno,
fariĝu Via volo,
kiel en la ĉielo tiel ankaŭ sur la tero.
Nian panon ĉiutagan donu al ni hodiaŭ
kaj pardonu al ni niajn ŝuldojn,
kiel ankaŭ ni pardonas al niaj ŝuldantoj.
Kaj ne konduku nin en tenton,
sed liberigu nin de la malbono.
Patro nia, qua esas en la cielo
tua nomo santigesez;
tua regno advenez;
tua volo facesez
quale en la cielo tale anke sur la tero.
Donez a ni cadie l'omnadiala pano,
e pardonez a ni nia ofensi,
quale anke ni pardonas a nia ofensanti,
e ne duktez ni aden la tento,
ma liberigez ni del malajo.
Patre nor, qui es in li cieles,
Mey tui nómine esser sanctificat,
mey tui regnia venir.
Mey tui vole esser fat
qualmen in li cieles talmen anc sur li terre.
Da nos hodie nor pan omnidial,
e pardona nor débites,
qualmen anc noi pardona nor debitores,
E ne inducte nos in tentation,
ma libera nos de lu mal.
Nusen Patre, kel es in siele,
mey vun nome bli sanktifika,
mey vun regno veni;
mey on fa vun volio
kom in siele anke sur tere.
Dona a nus disidi li omnidiali pane,
e pardona a nus nusen ofensos,
kom anke nus pardona a nusen ofensantes,
e non dukte nus en tentatione,
ma liberisa nus fro malu.
Patre nostre, qui es in le celos,
que tu nomine sia sanctificate;
que tu regno veni;
que tu voluntate sia facite
como in le celo, etiam super le terra.
Da nos hodie nostre pan quotidian,
e pardona a nos nostre debitas,
como etiam nos los pardona a nostre debitores.
E non induce nos in tentation,
sed libera nos del mal.
Nos Padre, ci es en sielo,
sante es tua nome;
tua renia va veni;
tua vole va es fada;
en tera como en sielo.
Dona nosa pan dial a nos,
pardona nosa pecas,
como nos pardona los ci peca a nos.
No condui nos a tentia,
ma proteje nos de mal.
mama pi mi mute o, sina lon sewi kon.
nimi sina li sewi.
ma sina o kama.
jan o pali e wile sina
lon sewi kon en lon ma.
o pana e moku pi tenpo suno ni tawa mi mute.
o weka e pali ike mi.
sama la mi weka e pali ike pi jan ante.
o lawa ala e mi tawa ike.
o lawa e mi tan ike.

センテンスごと

他の言語に合わせて日本語の語順を調整しています。

天にましますわれらの父よ、
願わくは御名の尊まれんことを、
御国の来たらんことを、
御旨の行われんことを、
天に行わるる如く地にも。
われらの日用の糧を今日われらに与え給え。
われらの罪を赦し給え、
われらが人に赦す如く。
われらを試みに引き給わざれ、
われらを悪より救い給え。

出典

主の祈りの出典は Wikipedia です。

参考

ヴォラピュクの解釈は以下を参照してください。

トキポナの他の表記は以下を参照してください。

この記事と同じようなことをしてみたい方のためにテンプレートを公開しました。

ブラウザの音声合成 API の主な使い方をまとめました。技術的な資料はこちらを参照してください。

人工言語

人工言語の歴史について簡潔に説明した本です。1994年発行のためエレフェンやトキポナは登場しません。

ノヴィアルを発表した本の PART I はノヴィアル以前の人工言語の概観となっています。それらに飽き足らずに新しい言語を作ったため、批判的な立ち位置です。

辛口で人工言語を批評している YouTuber です。単純な言語が好みらしくトキポナやエレフェンを推しています。

それに対抗するかのようにエスペラントを擁護する YouTuber もいます。